「原子力行政を問い直す宗教者の会」は、諸外国を含む人々の命と生活そして国土をおびただしく破壊したかつての戦争を止められなかっただけでなく加担してきた宗教者としての反省の上に立ち、社会の分断や様々な不安を押し付けられる原発立地の住民や、被ばくを余儀なくされる労働者の側に寄り添い、核の無い平和な世界をめざしつつ、国民のモラルを汚す嘘と隠ぺいにより進められてきた原子力政策を自らの宗教的課題として問い続けています。これまで原発立地各地の住民や行政、事業者等との対話をはじめ、専門家を招いての学習会などを重ねてきました。
この度、一昨年来の原子力政策の大転換、昨年のGX法の成立が、国民による議論もなく強引に進められている中、また、今年元旦に能登半島地震が発生し、安全神話が崩れていく中、龍谷大学の大島堅一教授と、原発ゼロの会の山﨑誠衆議院議員をお招きし、またその折に能登半島被災現地の宗教者たちとオンラインで繋ぎながら、1月17日~18日の日程で京都に於いて全国集会を開催しました。
そこであらためて、この国の原子力政策が、一部の既得権・利権集団に画策されたまやかしの上に成り立っていること、原発立地で大きな地震は起きないという前提は成り立たないうえ、避難計画に災害時の考慮がなされていないこと、経済的に合理性がないこと、リスクとコストを未来永劫に押し付けることを、具体的に確認し、その上で別紙の声明を政府に提出する運びとなりました。
つきましては、過去と未来に責任を果たしたいと願う宗教者として、この声明の趣旨を多くの人々と共有し、公正で持続可能な社会を人々と共に築いていきたく、ご関係諸機関、ご知友に周知いただけましたら幸甚に存じます。
2024年1月18日
内閣総理大臣 岸田文雄様
経済産業大臣 齋藤 健様
原子力行政を問い直す宗教者の会
事務局 長田浩昭(真宗大谷派)
岡山 巧(真宗大谷派)
内藤新吾(ルーテル教会)
大河内秀人(浄土宗)
諫言:原発回帰政策の撤回と全国の原発を廃止することを求めます
私たち「原子力行政を問い直す宗教者の会」は、原子力に関する国策を憂慮する各地の宗教者(仏教、キリスト教、神道など)で構成される全国ネットワークです。(1993年結成)
今回の能登半島地震で明らかになったことと政府の原発回帰政策への抗議から、以下を諫言します。
- 自然界からの警鐘は真摯に聞くべきです。
今回の地震で、珠洲原発立地予定地だった高屋町では数メートルの地盤隆起が起きました。もし原発が建っていたら、配管が破損し冷却機能が失われ、福島をも超える原発震災となっていた恐れがあります。原発立地調査ではこのような地震を予測できなかったことが明らかになりました。また今回、専門家の方々により、活断層の連動の可能性も指摘されています。地震列島での原発稼働は無謀の極み、自然界からの警鐘は真摯に聞くべきです。 - 原発震災での避難は不可能です。
今回の地震で、大災害が起きた場合の避難計画は、絵に描いた餅であることが明らかになりました。崖崩れや隆起などにより道路そのものが使えなくなるのです。また、地震と原発事故が同時に起きた場合 (原発震災)、家屋の倒壊により屋内退避(5~30km圏内)も成立しなくなります。人々は被曝を避けられません。そもそも避難計画は、原子力規制委員会の審査対象とすべきであり、規制委員会も現在のようなトップ3(長官、次長、原子力規制技監)が原発推進の経産省出身者で占められている体制は安全性を放棄しています。 - 原発はコストの高いエネルギーです。
政府は、一昨年に原発政策の大転換、昨年に関連GX法を成立させましたが、今や原発は価格競争力を失っています。太陽光と風力の再生可能エネルギーが世界ではどんどんと伸びて、最安値です(約8~9円/1kWh)。逆に、原発は最も価格の高いエネルギーです(大島堅一先生が電力各社の2011年から10年間の原発関連費用を有価証券報告書により計算したところ約52円/1kWh)。さらにここに死の灰処理代が加わっていきます。それなのに、政府は原子力基本法までもバタバタと数の力で改悪を行い、他のエネルギーによる方法については触れず、原発だけに脱炭素のための経済措置(すなわち国民の負担による支援策)をとるという項目を加えたことは、国民を欺く行為です。殆どの国民がこのことを知らされていません。原発が産業として使命を終えているのなら、その事実を正直に伝え、廃止に向けて大きく踏み込む政策転換が本来と言えます。(原発の運転期間延長や新増設なども、もっての外です)
以上、私たちは、いのちを軽んじ経済的にも国民を圧迫する現原発政策の撤回を求めます。